はーど・ぼいるどにっき①
いつものやつ…。
いつものバー、いつものバーテンから注がれたバーボンが、そっと目の前に置かれた。
静かな空間に、優しいジャズが流れてくる。
いいチョイスだ。
時代は移りゆく…昭和から平成へ、平成から令和へ。
その間に多くの物が失われていった。
レコード版、古びたバー、あと何があっただろうか…
そんな中、唯一未だに生き残っているホンモノがある。
洗練されたフォルム、しっかりと片手にホールドしているが、それに見合わない質量、重さがまるで感じられない。
だが、しかし、それは確かに存在している。
大量の空気を纏った、それは令和の今も色褪せる事無く、しかも発売当時よりも安く売られているかもしれない。
そっと封を開けても、下の方が折れていてがっくりくるコトもあるが、それもまた味だ。
毎日…じゃなくていい。
沢山でなくていい。
ひとつだけあれば充分だ。
それこそが本物だけが持つ、風格と言えるだろう。
イチゴカプリコ。
生涯愛すべき存在だと、そう言えるだろう。